コラム

空室が多い収益物件を売却するには?満室化してから売るべきかを解説

空室が多い収益物件を売却するには?満室化してから売るべきかを解説

空室が目立つ収益物件を前に、このまま売却活動を始めるべきか、手間や費用をかけて満室にしてから売るべきか迷っているオーナーは少なくありません。空室が多いと売却価格が下がる不安がある一方、リフォームや客付けには費用と時間がかかり、その投資を売却価格で回収できるかの判断は簡単ではないからです。

結論からお伝えすると、どちらが正解かは物件ごとに異なり、「満室にするための費用」と「満室にすることで見込める評価の改善」を比較して決めることが基本になります。そのうえで、なぜ空室なのかという原因、売却を急ぐ事情、建物の状態、立地による入居の決まりやすさを重ねると、取るべき方針が見えてきます。

本記事では、広島の不動産売却・投資をサポートする株式会社ASULANDが、広島市をはじめとする収益物件の売却で役立つ考え方として、空室のまま売る場合と満室にして売る場合のメリット・注意点、状況別の判断基準、そして空室が多いまま少しでも高く売るための具体策を解説します。

目次

 

空室の多い収益物件はそのまま売るべきか?満室化すべきか?

収益物件では、将来得られる賃料収入や稼働率が価格判断の重要な要素となるため、空室が多い状態は収益評価に影響する可能性があります。ただし、実際の売却価格は立地や土地・建物の価値、周辺の取引事例、修繕状況なども含めて判断されます。満室化が常に得になるとは限らないため、物件と売主の両面から状況を整理することが欠かせません。

「物件の現状」と「売主の事情」から最適な方針を見極める

判断材料は大きく2つに分けられます。1つは物件の現状で、建物の劣化具合、空室が埋まらない理由、周辺の賃貸需要などが当てはまります。もう1つは売主の事情で、いつまでに売りたいか、満室化にかけられる資金がどのくらいあるかといった点です。

なかでも最初に取り組みたいのが、満室化の費用を計算する前に、空室の原因を特定することです。原因によって、取るべき打ち手はまったく異なります。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

空室の主な原因 考えられる打ち手
賃料が周辺相場より高い 相場に合わせた賃料の見直し
募集条件や募集範囲が不十分 仲介会社への情報共有、募集条件の調整
設備が古い・不足している 需要の高い設備の導入や入れ替え
共用部の清掃や管理が行き届いていない 管理会社との管理内容の見直し
間取りが周辺の需要と合っていない 間取り変更を含む改修の検討
築年数や立地そのものの課題 満室化より、現状での売却や買取の検討

賃料設定や募集方法、管理状態のように改善しやすい原因であれば、満室化を検討する余地があります。反対に、建物そのものや立地に大きな課題がある場合は、満室化の費用がかさみやすく、効果も読みにくくなります。

重要な判断材料となる想定収入と現況収入の差

収益物件の広告には、満室を前提とした「想定利回り」と、現在の入居状況にもとづく「現況利回り」の2種類が使われます。買主は、実際に得られている家賃収入と、満室にできる見込みの両方を確認したうえで購入を判断します。

仮に、1室あたり月5万円・全10室のアパートで4室が空室だとすると、収入の見え方は次のように変わります。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

項目 満室想定 現況(4室空室)
年間家賃収入 600万円 360万円
年間家賃収入÷8%で計算した場合 7,500万円 4,500万円

※上記は「年間家賃収入÷8%」という単純な表面利回り計算で、収入差をイメージするための例です。実際の売却価格が4,500万円・7,500万円になることを示すものではありません。実際の価格は、空室率や運営経費、修繕状況、土地・建物の価値、周辺取引事例、市場で求められる利回りなどを踏まえて判断されます。

不動産鑑定評価の考え方でも、収益をもとに価格を求める方法は、家賃の総額ではなく、経費などを差し引いた純収益を基礎とします。賃貸用の不動産では、賃借人の状況や賃貸借契約の内容、貸室の稼働状況なども価格に影響する要因とされています。想定収入と現況収入の差を把握することは、満室化を検討するうえでの重要な判断材料の一つです。

出典:不動産鑑定評価基準|国土交通省

✓ポイント:空室の多い収益物件の売却方針は、まず空室の原因を特定し、そのうえで建物の状態や売却期限、使える資金といった事情を照らし合わせて決めることが大切です。想定収入と現況収入の差は満室化を考える際の判断材料になりますが、価格はそれだけで決まるものではないため、経費や物件全体の価値も含めて検討する必要があります。

 

空室のまま売却するメリットと注意点

空室のまま売る最大の利点は、余計な費用や時間をかけずに売却を進められる点です。ただし、収益物件としての評価は下がりやすいため、メリットと価格面のリスクを両方理解しておく必要があります。

修繕や客付けの費用・時間をかけずにスピーディな手放しが可能

満室化には、原状回復やリフォームの費用、入居者募集にかかる費用などが必要で、入居者が決まるまでの期間も読めません。空室のまま売却すれば、こうした費用や手間を負担せずに売却活動を始められます。

保有を続けるほど、固定資産税やローン返済、建物の維持費などの負担は続きます。空室が多く家賃収入が少ない物件では、早めに手放すことで毎月の持ち出しを止められる点もメリットです。

リノベーション目的や自己使用を前提とする新たな買主層を取り込める

空室が多い物件は、入居者がいる物件とは異なる買主層に評価されることがあります。たとえば、全面的なリノベーションで価値を高めたい不動産会社や投資家、住居や事務所として自ら使いたい買主です。

入居者がいる物件では、すぐに自己使用や建て替えができるとは限りません。特に普通建物賃貸借では、貸主側から更新を拒絶したり解約を申し入れたりするには、原則として借地借家法上の正当事由が必要です。一方、定期建物賃貸借は期間の満了によって更新されずに終了する契約で、期間が1年以上の場合は、満了の1年前から6か月前までに終了の通知を行う必要があります。このように契約形態によって扱いが異なるため、既存の賃貸借契約を確認しておくことが大切です。

空室が多い状態であれば、こうした退去の調整が少なく済むため、空室であること自体が買主にとってのメリットになる場合もあります。

出典:《大家さんのための》定期建物賃貸借契約|国土交通省

金融機関の融資評価が厳しくなり、売却価格が下落するリスクがある

一方で、空室が多い収益物件は、買主が利用するローンの審査で不利になりやすい傾向があります。金融機関は物件の収益性を融資判断の材料の一つとするため、家賃収入が少ないと融資額が抑えられたり、自己資金を多く求められたりすることがあるからです。

買主が十分な融資を受けられなければ、購入できる価格の上限も下がります。結果として検討できる買主が限られ、価格交渉で譲歩を迫られるおそれがある点は理解しておく必要があります。

✓ポイント:空室のまま売却すると、費用と時間をかけずに手放せるうえ、リノベーションや自己使用を考える買主に評価される可能性もあります。その反面、投資目的の買主にとっては融資を受けにくい物件となり、価格が下がりやすいため、どの買主層に売るのかを意識して進めることが重要です。

 

満室にしてから売却するメリットと注意点

満室にしてから売る方法は、収益物件としての評価を高めやすい反面、先に費用を投じるリスクを伴います。評価の改善幅と投下コストのバランスが判断の鍵です。

現況利回りが向上し、投資家への訴求力と物件価値が高まる

満室になれば、現況利回りと想定利回りの差が縮まり、実際の家賃収入にもとづいて物件を検討してもらいやすくなります。購入直後から家賃収入が得られる「オーナーチェンジ物件」として、投資家の目に留まりやすくなる点も強みです。

入居者が決まっていることは、その物件に賃貸需要があることの裏づけにもなります。家賃の相場や入居の決まりやすさを示す材料として、買主の不安を和らげる効果が期待できます。

収益性を説明しやすくなり、買主層が広がる可能性がある

家賃収入が安定していれば、買主は金融機関に物件の収益性を説明しやすくなります。結果として資金調達の選択肢が広がれば、購入を検討できる買主が増える可能性があります。

ただし、融資の可否や条件は、稼働状況だけでなく買主の属性や担保評価、物件の状態、金融機関の融資方針などによっても異なります。満室にすれば融資が通り、高く売れるという関係が必ず成り立つわけではありません。

リフォーム代や広告費などの投下コストを回収しきれない恐れがある

満室化で注意したいのが、かけた費用を売却価格で取り戻せるかどうかです。満室化には、原状回復やリフォーム費用、入居者募集に伴う仲介手数料や、契約内容に応じた広告費などがかかる場合があります。主な費用は次のとおりです。

  • 退去後の原状回復や、設備交換・リフォームの費用
  • 入居者募集に伴う仲介手数料や、特別に依頼した広告等の費用
  • 入居を促すための家賃の値下げやフリーレント
  • 入居者が決まるまでの期間のローン返済や維持費

なお、宅地建物取引業者が賃貸の仲介で受け取れる報酬には上限が定められており、それとは別に費用が生じるのは、依頼者が依頼した広告の料金など一定の場合に限られます。

また、相場より大幅に家賃を下げたり、長期のフリーレントを付けたりして入居を決めると、物件の収益力を正しく示せません。買主は賃貸借契約の内容や入居履歴を確認するため、無理な客付けはかえって評価を下げる原因になります。

出典:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(建設省告示)令和6年6月21日改正|大阪府

✓ポイント:満室化は、現況利回りの改善によって買主の検討材料を増やし、評価を高めやすい方法です。ただし、リフォーム代や募集費用、空室期間中の負担を売却価格の上昇分で回収できるとは限らないため、費用の見積もりと評価の改善幅を事前に比べておくことが欠かせません。

 

状況別で見る「そのまま売る・満室にして売る」の判断基準

ここまでの内容を踏まえ、代表的な3つのケースで判断の目安を整理します。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

状況 方針の目安 主な理由
資金や時間に余裕がなく、早期売却を優先したい 空室のまま 満室化の費用と期間を負担せずに済む
建物の老朽化が激しく、大規模な修繕が必要 空室のまま 修繕費が評価の上昇分を上回りやすい
軽微な修繕で入居が決まりやすい好立地 満室化 少ない費用で評価を高めやすい
資金や時間に余裕がなく、早期売却を優先する場合は「空室のまま」

ローン返済が家賃収入を上回っている、相続税の納付期限が迫っているなど、売却を急ぐ事情がある場合は、空室のまま売り出すほうが現実的です。満室化には数か月以上かかることもあり、その間の持ち出しが増えれば、価格面で得をしても手元に残る金額は変わらない、あるいは減ってしまう可能性があります。

建物の老朽化が激しく、大規模な修繕が必要な場合は「空室のまま」

外壁や屋根、給排水管などの大規模な修繕が必要な物件では、満室化の前に多額の工事費がかかります。こうした物件は、建て替えや全面改修を前提とする買主が価格を判断することが多く、売主が修繕しても、その費用ほど価格が上がらないケースが少なくありません。

軽微な修繕で入居者が決まりやすい好立地物件なら「満室化」

駅や電停に近く、周辺の賃貸需要がある物件で、空室の原因が内装の古さや募集方法にとどまるなら、満室化を検討する価値があります。広島市の場合、2025年の国勢調査で中区は世帯数が5.1%増えた一方、安佐北区は2.3%減っており、エリアによって入居の決まりやすさには差があります。少ない費用で入居が見込めるかどうかを、エリアの需要と合わせて判断することが大切です。

✓ポイント:早期売却を優先する場合や大規模修繕が必要な場合は空室のまま、軽微な手直しで入居が決まりやすい立地なら満室化というのが基本的な考え方です。いずれの場合も、満室化にかかる費用と期間、評価の改善幅を数字で比べてから方針を決めることが、後悔しない売却につながります。

 

空室が多い物件をそのまま高値で売却するコツ

空室のまま売ると決めた場合でも、売り方を工夫することで価格の下落を抑えられる可能性があります。ここでは3つの方法を紹介します。

収益物件・一棟アパート・一棟マンションの売買実績が豊富な不動産会社を選ぶ

空室の多い収益物件は、一般的な住宅とは買主層も評価方法も異なります。収益物件の取引に慣れた不動産会社であれば、リノベーションを得意とする業者や、地域で物件を探している投資家とのつながりを持っていることがあります。

依頼先を選ぶ際は、一棟アパートや一棟マンションの売買実績、空室の多い物件を売却した事例を確認するとよいでしょう。査定額の高さだけでなく、その根拠を具体的に説明できるかどうかも判断材料になります。

空室リスクを織り込んだ説得力のある事業計画を買主に提示する

買主が空室の多い物件を敬遠する大きな理由は、「本当に入居者が決まるのか」が見えないことです。そこで、周辺の家賃相場や入居状況、空室の原因と改善策、必要な修繕内容と費用の目安、満室までの想定期間などをまとめた資料を用意すると、買主は購入後の収支を検討しやすくなります。

あわせて、修繕履歴や現在の賃貸借契約の内容、家賃の入金状況を一覧にしたレントロールなどを整理しておくと、物件の状態を正確に伝えられ、交渉が進めやすくなります。

仲介だけでなく不動産買取業者への直接売却も選択肢に含める

仲介で買主が見つかりにくい場合は、不動産会社が直接物件を買い取る「買取」も選択肢になります。

※表は左右にスクロールして確認することができます。

比較項目 仲介 買取
売却価格 市場価格に近い水準を目指せる 仲介より低くなる傾向がある
売却までの期間 買主探しの期間が読みにくい 比較的短く、時期を決めやすい
仲介手数料 必要 買取業者が直接買主の場合は不要
契約不適合責任 契約条件による 売主の責任範囲を限定する特約が設けられる場合がある

買取では、売主の契約不適合責任を限定する条件で合意できる場合があります。ただし、責任の範囲は売買契約によって異なり、売主が知りながら告げなかった事実などまで当然に免責されるわけではありません。

価格よりもスピードや確実性を優先したい場合には、買取を検討する価値があります。仲介と買取の両方で査定を取り、手元に残る金額で比べることをおすすめします。

✓ポイント:空室の多い物件をできるだけ高く売るには、収益物件の売買に強い不動産会社を選び、買主が購入後の収支を描ける資料をそろえることが効果的です。仲介で買主が見つかりにくい場合は買取も含めて比較し、価格・期間・契約条件のバランスで売却方法を選ぶと判断しやすくなります。

 

迷った場合は売却活動と賃貸募集の同時進行も有効策となる

空室のまま売るか満室にしてから売るか決めきれない場合は、売却活動と賃貸募集を並行して進める方法もあります。売り出しと同時に入居者を募集し、入居が決まれば現況利回りが改善した状態で買主と交渉できます。買主が先に見つかれば、その時点の状況で売却すればよいため、判断を先延ばしにして機会を逃すリスクを抑えられます。

ただし、同時進行には注意点もあります。募集中に新しい入居者が決まると、現況利回りやレントロールの内容が変わり、交渉中の買主に条件の変更を説明する必要が出てきます。自己使用や建て替えを考えている買主にとっては、入居者が増えることがかえってマイナスになる場合もあります。そのため、売却を担当する不動産会社と「いつまで入居募集を続けるか」をあらかじめ決めておくことが大切です。

なお、借主が建物の引渡しを受けるなど、第三者に賃貸借を対抗できる要件を備えている場合、物件の売却に伴って賃貸人の地位は原則として買主へ移り、敷金返還義務なども新しいオーナーに承継されます。募集条件や契約内容は、売却を担当する会社と共有し、買主に正確に伝えられるようにしておく必要があります。

空室の多い収益物件の売却は、空室の原因、満室化の費用と評価の改善幅、売却を急ぐ事情、建物の状態、立地の需要を総合的に見て判断することが求められます。株式会社ASULANDでは、広島市を中心に収益物件の売却や資産整理のご相談を承っています。空室の多い物件をどう売るべきか迷っている方は、売却と賃貸募集のどちらも見据えた方針づくりから、お気軽にご相談ください。

監修者情報 監修者情報 株式会社ASULAND
代表取締役 伊茂治 直毅
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